令和2年5月22日、北海道と一都三県を除いて緊急事態宣言が解除されました。5月26日には、全国で一斉解除との報も。
解除された地区では緊急事態宣言明けから通常保育を始めたところもあれば、5月31日まで休園を継続し、その後通常保育が始まるところ、引き続き家庭保育が可能な家庭に対しては登園自粛を要請するところなど、自治体によってさまざまな動きが見られます。
改めて保護者の選択が問われる「宣言明け」の保育園生活。子どもたちはどのように園の生活を取り戻していくのでしょうか。
保育士さんを悩ませる「遊び」「給食」「午睡」の対応
「Withコロナ」の時代の保育園、最も大きな課題は、子ども同士の「密」をどう防ぐかです。
小さな子どもは1日中マスクをつけていられません。年長5歳児のわが子も、外出中に1時間程度付けているのが限界。ちょっと走れば「暑いよ~」、時間が長くなれば「耳がいたい~」。1日10時間近くに及ぶフルタイムの保育で、ずっとマスクを着用しているなんて絶対にムリ!です。
遊び:プール保育ができない!? 熱中症対策も大変!
外遊びは比較的ソーシャルディスタンスを取りやすくても、これからどんどん暑くなる季節に外遊び? 熱中症リスクのほうが高い感じがします。
室内遊びはそれこそ「密」になりやすい環境といえます。
たとえ小さなグループに分けて保育をしたとしても、人手や保育スペースは圧倒的に足りなくなります。ただでさえ人手不足&待機児童対策のための規制弾力化で保育室がぎゅうぎゅうの「密」になっている保育園。これ以上どうしろと!?という感じですね。
国が定める保育士の設置基準は以下の通り。
- 0歳児:子ども3人に対して保育士1人
- 1~2歳児:子ども6人に対し保育士1人
- 3歳児:子ども20人に対し保育士1人
- 4歳児以上:子ども30人に対し保育士1人
この基準は各自治体・各施設ごとに異なっており、国の基準よりも厳しい基準で保育士を多めに配置している園は多いですが(保育補助が入ることも多いですし)
それにしても子ども30人を少人数グループ保育するとすると、いったい何人の保育士さんが必要になるでしょう。考えると、ひぃー!ってなりますね。
感染予防の観点から、今年度はおそらくプール保育を中止する自治体も出てくるでしょう。ますます「どうやって遊ぶの?」という疑問がわいてきます。
給食:「対面」させずに食べさせることはできるの!?
飛沫感染のリスクが高い給食時間。子どもたちを「対面」で食べさせないように、食事スペースも確保せねばなりません。
が、都市部の保育園はただでさえ少ない保育スペースをやりくりして保育をしています。
クラスを複数のグループに分け、時間をずらした給食が現実的かもしれませんが、そうすると午睡の時間が大幅にずれこんだり、午前中の早い時間から昼食を食べさせたり…。
子どもたちもお腹が空いていればいいですが、朝食から間があかず給食となると、スピードが遅くなって給食時間はかえって長引く、食べ残しも出る、補食(おやつ)やお迎えまでにお腹が空いてしまうなどなど、いろんな影響が出そうです。
ああ、保育士さんたち、いったいどうするんだろう…。何グループも延々と続く給食を想像するだけで、私の気が狂いそうです!ひぃー!
午睡:部屋中にギッシリとお布団。典型的「密」に…。
ホールや教室に所狭しとお布団を並べて眠る、保育園の午睡。顔と顔を並べて眠る子どもたちは、横になると咳き込む子も。なかなかのド密です!
昨今では乳児クラスはともかく、幼児クラスには昼寝不要論も出ていて、実際に午睡を廃止している保育園もでてきていますから、緊急事態宣言後は午睡廃止という園も出てくるかもしれません。
が、園の運営において、子どもたちが寝ている時間は保育士さんたちの貴重な時間でもあります。休憩は言うに及ばず、連絡帳を書いたり、デスクワークをしたり、保護者の電話対応や制作・行事の準備等、びっくりするくらいやることがあります。
(我々親もそうですよね。子どもが寝ている時間が唯一の作業時間!という人もテレワーク中は多かったはず)
「午睡なし」になることで、感染リスクは下がったとしても、保育士さんへの負担が増える懸念はぬぐいされません。
新入園児でなくても「慣らし」の必要がある
緊急事態宣言解除となっても、社会はいきなりフルスピードで動き始めるわけではなさそうです。一般企業は基本的に在宅勤務がベースで、6月1日から分散出勤を始めるという声が多いようです。
とはいえ、商業施設や観光地は営業を開始し、図書館や美術館も6月から開館となるところが増えてきます。となると、そこで働く親もまた、通常の勤務業態が戻ってくるのです。
でも…。いきなりフルタイム、できますか? 大人だって元の生活に戻していくのに気力体力を使うのに、2か月近くのんびりと家庭保育をしてきた子どもは、いきなり集団生活に入って大丈夫?
子どもに慣らしが必要な理由:集団疲れと病気のケア
お正月やGWの長いお休み明けでさえ、いつもの生活との違いに愚図ったり、体調を壊したりしがちな子ども。2か月もの長期間、生活リズムが変わってしまった子どもには「慣らし保育」が必要です。
お友達と一緒にいることは、楽しいですが気も使います。これまでは「〇〇して~」の一言でしぶしぶでも仕事の手を止めて対応してくれていた親が、急にいなくなるのです。そのストレスは、子どものこころや体に直接ひびいてきます。
保育園生活も10年目に入った私の経験上、疲れた子どもはだいたい体調を崩します(苦笑)。風邪でもないのに熱を出したり、胃腸炎や皮膚炎など健康だったらかかりにくい感染症を拾ってきたり。
いきなり長時間の保育は避けて、徐々に徐々に時間や日数を増やしていくという慣らし(アイドリング)が必要になるんだろうなぁ、と思っています。
親に慣らしが必要な理由:オーバーワーク&価値観変化による抑うつ感
ようやく子どもと24時間一緒の生活から解放!?されて、思う存分自分のペースで仕事ができる! たまった仕事を片付けるため、ドッグランに解き放たれたワンコのごとく、全力疾走してクラッシュする人が続出しそうな予感がいたします…。
これまでとは違って、Withコロナは常に感染を気遣いながらの社会生活です。各保育園では引き続き、園内の密状態を避けるため登園自粛要請は続きます。「家庭保育ができる人は通わせるのを控えてほしい」という何ともグレーな要請に、在宅勤務で家庭保育もやろうと思えばできる状態で預ける罪悪感、感染症リスクがある中で本当に子どもを通わせていいのだろうかという葛藤…。
働きたい気持ちと、働いてはいけないのでは?という気持ちが交錯して、モヤモヤ。なかなかポジティブにすっきりと割り切れませんね。私もそうです。
保育園に慣らしが必要な理由:保育をしながら体制づくりを進める難しさ
保育園にとっても「慣らし」は必要だと思います。
未曾有の事態に対して、保育現場にはまだ参照すべき確たるガイドラインがありません。これからの対応は、保育を走らせながらつくっていくことになる。公立園は自治体の決定なきまま動くことができないし、私立園も自分たちの独自策を今後を見据えて策定していかないといけない。そんなときに通常保育のタスクが押し寄せてしまうのは、どう考えても保育園への負担が大きすぎます。
しかも敵は、長期休暇明けでグズグズの「手負い」の園児たちですからね…。ひぃー!
毎年4月の新入園の時期は、保育士さんたちも大変です。毎年、新入園対応に慣れたベテラン保育士さんなどを中心に、プロの技術と心意気で乗り越えておられているのを「すごいなー」と思いながら見ていました。
今回の緊急事態宣言明けは、新入園+進級直後+長期休暇明け+感染症対策という、ポーカーでいったらロイヤルストレートフラッシュくらいの困難が待ち構えているのではないかと。
我々保護者にできることといえば、子どもを預けずに保育現場の負担を減らすこと。でも、それだと仕事ができない。子どもの育ちも止まってしまう。でも、でも、でも…。
というわけで、ジワジワと子どもにも親にも保育園にも「慣らし」の時期の必要性を大いに感じるわけです。はい。